街で見かける店員も、運転手も、通りすがりの人も、実は全員が「変装した同一の知人」だと思い込んでしまう症状です。脳がすべての他人の顔を知人と誤認してしまいます。

カプラス症候群が「愛する人を赤の他人」と感じるのに対し、フレゴリの錯覚はその鏡合わせのような症状です。患者はたった一人の人物が姿を変えて自分を追いかけていると信じ込むため、世界が非常に狭く、恐ろしい場所に感じられます。
この病名は、舞台上で瞬時に衣装と役柄を変えることで有名だったイタリアの俳優レオポルド・フレゴリにちなんでいます。患者は、知人が特殊メイクや変装を駆使して、正体を隠しながら自分の周りに居座り続けていると思い込みます。
健康な脳では、顔の識別は視覚と記憶のバランスによって行われます。
これはしばしば深刻な被害妄想につながります。スーパーでも公園でも、どこへ行っても同じ人物が別の体に入って自分を監視していると感じるのです。すべての他人が潜在的なストーカーに変わってしまいます。
フレゴリの錯覚は、脳が単に画像を見ているのではなく、能動的に「意味」を作り出していることを証明しています。連合記憶と顔処理エリアが混線すると、世界中がたった一人の俳優が演じ続ける舞台に変わってしまうのです。