皮膚は治り、骨はくっつきますが、歯のエナメル質は生きた組織ではありません。そのため、一度傷ついたり削れたりすると、体はそれを元通りに再生することができないのです。

人間の体は修理の達人です。指を切れば皮膚が再生し、骨を折れば細胞が新しい骨を作ります。しかし、歯だけはこの自己修復のルールから外れた大きな例外です。
歯の表面を覆うエナメル質は、人間の体の中で最も硬い物質です。そのほとんどが鉱物(ミネラル)でできているため、骨よりも頑丈です。
骨は血液が通る生きた臓器で、常に作り替えられています。一方、エナメル質を作る細胞は、歯が歯茎から生えてくる時に死んでしまいます。役目を終えた細胞は、エナメル質を「生きていない盾」として残して消えてしまうのです。
歯は「治る」ことではなく、圧倒的な「硬さ」で一生持たせるように設計されています。生えてきた瞬間に完成し、二度と作り直せない、体の中で唯一の補充不可能なパーツなのです。